「抗精神病薬の減薬・減量ガイドライン策定に向けた症例集集積研究」へのご協力のお願い

 近年、統合失調症、大うつ病性障害、あるいは双極性障害などにおける薬物療法は多様化・複雑化しています。抗精神病薬、抗うつ薬、あるいは気分安定薬の単剤療法で効果が得られない場合、薬剤の切り替え、増強療法、あるいは併用療法などで対処しますが、多剤大量療法を招く場合があります。

 多剤大量療法は、治療効果を増強するというエビデンスは少なく、むしろ副作用のリスクを上昇させることが指摘されています(英国NICEガイドライン 2017年)。したがって、治療効果を薬剤の薬理学的特性から考慮する必要があります。また、多剤大量療法の解消には、処方の単純化・減量のスキルを習得し、副作用の顕在化などによるアドヒアランス向上を目指した支援が鍵となります。

 本研究では、薬剤師が主体となり、統合失調症の多剤大量療法における減薬・減量ガイドラインの構築を目指します。皆様におかれましては、本研究の趣旨をご理解いただき、新しいガイドラインの作成に向けてご協力いただきますようよろしくお願い申し上げます。

研究概要

  1. 目的
     抗精神病薬の多剤大量投与の是正には、エビデンスに基づいた減薬・減量ガイドラインが 不可欠であり、「抗精神病薬の多剤大量投与の安全で効果的な是正に関する臨床研究」より、SCAP(safety correction of high-dose antipsychotic polypharmacy)法による減量プロトコールが提案されている1)。
     このSCAP法では、抗精神病薬の減量速度を以下のように規定している。すなわち、1回・1週当たりの減量は高力価薬[クロルプロマジン(chlorpromazine ; CP):100㎎との等価量が10 ㎎未満であるもの]はCP換算で50 ㎎以下、低力価薬(CP 100㎎との等価量が10 ㎎未満であるもの)はコリン性副作用の離脱を考慮してCP換算で25 ㎎以下としている。 しかしながら、SCAP法にそぐわない事例が存在することや個別の抗精神病薬の薬理学的な特徴や薬物動態を考慮した減量方法について検討されていない。
     そこで、本研究では従来のSCAP法に準じて減量を行った症例を収集し、減量や単剤化に成功した例やSCAP法にそぐわなかった例を集積し、事例集を作成するとともにこれらの事例からより有用性の高い抗精神病薬の薬剤別の減量方法の基礎を構築していくことを目的とする。
    引用文献

    1) Sukegawa T, et al: Study protocol: safety correction of high dose antipsychotic
        polypharmacy in Japan. BMC Psychiatry 14:103, 2014.

  2. 研究実施計画の概要

研究実施計画の概要(研究実施計画書より抜粋)
  1. 研究のデザイン
    日本精神薬学会主管・多施設共同・前向き介入研究
    研究実施期間 承認日〜2025 年 3 月 31 日
  2. 研究対象者の選定方針
    1)選択基準
    抗精神病薬の 2 剤以上を 4 週間以上継続して服用しており、精神症状が
    安定している 16 歳以上の入院又は外来通院の統合失調症患者
    2)除外基準
    医師の判断により不適と判断された患者
    3)目標症例数
    200 例
    4)対象者数の設定根拠
    実施可能症例数であるため(500 名の当該学会員の半数近い会員が少な
    くとも 1 名当たり 1 症例の減薬・減量を実践することが可能と考える)。
  3. 評価項目
    1. 主要評価項目/主要エンドポイント/主要アウトカム
      ・抗精神病薬の減薬・減量の成否
      成功例:SCAP 法に準じて減薬・減量が達成され、症状の悪化が認められない例。なお、症状悪化の程度は減薬又は減量開始前の CGI(Clinical Global Impressions)から減薬又は減量達成 1 か月後の CGI(CGI-S、CGI-I)の変化により判断する。 失敗例:SCAP 法に準じて減薬・減量が達成されたが、症状の悪化が認められた例、又は症状悪化のため SCAP 法から逸脱してしまった例 中止基準(4-2):①研究対象者から同意の撤回があった場合、②研究対象者の疾患の状態や治療経過などから、研究を継続することが 好ましくないと担当医師が判断した場合、⑤その他、担当医師が中止すべきと判断した場合を含む。 なお、症状悪化の程度は減薬又は減量開始前のCGI(CGI-S)から減薬又は減量達成1 か月後のCGI(CGI-S、CGI-I)の変化、又は減薬・減量中止時のCGI(CGI-S、CGI-I)の変化により判断する。
    2. 副次的評価項目/副次的エンドポイント/副次的アウトカム 抗精神病薬の減薬・減量に失敗した場合の理由、抗精神病薬の減量に 関わる用量の推移、DIEPSS(Drug-Induced Extrapyramidal Symptoms Scale)の評価スコア(9 項目の評価を行う:資料1)
  4. 観察および検査項目(用いる試料・情報)とその実施方法
    1. 医療施設における診療録より以下の項目を抽出。 性別、年齢(減量開始前)、罹患歴、現病歴、薬歴、症例の問題点、減 量の目的、減量の方針、減量実施における問題点、SCAP 法による減量 実践の問題点と改善点
    2. 減量開始時点とその後原則 4 週間毎にCGI (Clinical Global Impressions; CGI-S、CGI-I)、DIEPSS(Drug-Induced Extrapyramidal Symptoms Scale)を測定する。対象症例の研究終了期間は原則 12 か月間とし、期間内に単剤化が完了した場合は、単剤化終了 4 週後に評価を行う。CGI の評価は各施設の担当医師が実施し、DIEPSS 及びその他の評価は薬剤師が実施する。なお、DIEPSS の評価を行う者は、所定の DIEPSS 講習会を修了した資格を有する薬剤師に限る。
  5. 研究参加の中止基準
    1. 研究中止時の対応
      医師及び日本精神薬学会会員である薬剤師は、次に挙げる理由で個々 の研究対象者について研究継続が不可能と判断した場合には、当該研究対象者についての研究を中止する。その際は、必要に応じて中止の理由を研究対象者に説明する。また、中止後の研究対象者の治療について は、研究対象者の不利益にならないよう、誠意をもって対応する。
    2. 中止基準
      ① 研究対象者から同意の撤回があった場合
      ② 研究対象者の疾患の状態や治療経過などから、研究を継続する ことが好ましくないと担当医師が判断した場合
      ③ 研究への参加基準を満たしていないことが明らかとなった場合
      ④ 本研究全体が中止となった場合
      ⑤ その他、担当医師が中止すべきと判断した場合
  1. 方法と対象
     抗精神病薬の2剤以上を4週間以上継続して服用している統合失調症患者を対象にSCAP法による抗精神病薬の減薬・減量を薬剤師が医師との協働により、医師の承諾を得た上で行う。対象患者は、研究期間中に抗精神病薬の減量を試みる16歳以上の統合失調症の診断を受けている患者。
  2. 対象者への同意について
     同意説明文書を研究対象者もしくは代諾者に渡し、文書及び口頭による十分な説明を行い、研究対象者の自由意思による同意を文書で取得する。未成年者の場合は保護者にも説明し、両者から同意を得る。

参加手順

当研究へご参加いただくにあたり、関連書類 (1)~(9)ファイル※をダウンロードして、必ず内容をご確認・ご承諾のうえご参加ください。

  1. 関連書類データの入手方法は、下記の手順で行います。

    ① 下記ダウンロードボタンから関連書類一式をダウンロードします。

    ※関連書類

    1. 研究実施計画書
    2. 研究審査結果通知書
    3. 同意説明文書
    4. 同意書
    5. 提出シート
    6. シート記入例
    7. SCAP法の説明と減薬・減量シートの作成例の症例について
    8. 資料1:DIEPSS
    9. 資料2:CGI
    10. 資料3:クロルプロマジン換算表

提出方法

  1. 提出方法(アップロード)は、下記の手順で行います。

    《事前準備》

    1. 患者から提出された同意書の原本は、施設にて保管し、写し(PDFファイル)を用意してください。
    2. 提出シートに症例を記入します。
    3. 同意書とシートのファイル名は、アップロード時に自動的にリネームしますので、任意のファイル名で保存してください。
    4. 提出書類は、「提出シート」と「同意書の写し」をセットとして、ご準備ください。

    《提出手順》

    1. 下記アップロードボタンからログインページに移動します。会員ログインIDとパスワードでログインします。
      ※会員ログインIDが不明な場合は、事務局メールにお問い合わせください。
    2. 会員専用トップページのメニューから「症例アップロード」をクリックして、アップロードページへ移動します。
    3. 入力方法
      ①症例番号(半角3桁)を入力
       ※同じ「症例番号」でアップロードした場合、データは上書きされますのでご注意ください。 
      ②症例の「ファイルを選択」からPC上の症例シートを選択します。
      ③同意書の「ファイルを選択」からPC上の同意書(写)を選択します。
      ④次の症例を選択する場合は、同意書下の[+]マークをクリックし、①~③の手順を繰り返します。
       ※一度のアップロードできる症例数は最大10件までです。
      ⑤全ての症例を選択し終えたら、「アップロード(提出)」ボタンをクリックし、ファイルをアップロードします。
      ⑥アップロードが完了しますと、完了画面が表示されます。提出内容に不備などがあれば、事務局よりお問い合わせさせていただきます。