利益相反管理の指針および細則

研究の利益相反(COI)に関する指針

前文
我が国では1995年の「科学技術基本法」に基づき1996年「科学技術基本計画」が策定され、国家戦略として産学連携活動が推進されてきた。その一方で、産学連携が盛んになるほど、大学や研究機関における教育・研究という研究者本来の責務と、産学連携活動に伴い生じる個人の利益とが衝突・相反する状態が必然的・不可避的に発生する。こうした状態が利益相反(conflict of interest:COI)と呼ばれるものである。利益相反状態は、その存在自体を禁じるべきものではない。その存在によって、学術研究の計画・実施・解釈・報告に資金提供者に有利な偏りが生じうること、極端な場合には科学的不正行為につながることが問題なのである。特に臨床研究においては、人間の尊厳・参加者の人権と安全の保護に不適切な影響が及びうることが問題とされる。このような研究に対する不適切な影響を防ぐため、研究者の利益相反状態が適切に公表され、管理されることが求められている。
そこで、一般社団法人日本精神薬学会(以下、「本学会」)では、社団法人日本精神神経学会の臨床研究の利益相反(COI)に関する指針を参考にし、本学会における研究活動における利益相反管理の指針および細則をここに定めることとした。
本学会では、臨床及び基礎研究を対象としており、経済的な利益相反のみを管理の対象とする。

我が国における利益相反に関する検討の経緯は以下のようである。
(1)世界医師会「ヘルシンキ宣言」1)を受け我が国で2003年施行された「臨床研究に関する倫理指針」2)では利益相反の倫理委員会・研究参加者への開示が求められた。
(2)2002年11月文部科学省「利益相反ワーキング・グループ報告書」3)では国立大学の独立行政法人化に伴い大学における利益相反管理を求めた。
(3)2006年3月文部科学省委託調査「臨床研究の利益相反ポリシー策定に関するガイドライン」4)が公表され、臨床研究における取扱いが明確化された。
(4)2008年3月厚生労働省「厚生労働科学研究における利益相反(COI)の管理に関する指針」5)により、基礎研究・臨床研究を問わず、補助金交付を受ける研究の利益相反管理が求められた。
(5)2010年、日本内科学会他関連の14学会が「臨床研究の利益相反に関する共通指針」を作成、学術団体における臨床研究に関する利益相反管理の方針が示された6)。
(6)2010年7月日本医学会「医学研究のCOIマネージメントに関するガイドライン」(案)、翌年2月その最終版が公表された7)。学術団体における臨床研究・基礎研究を問わない管理の方針が示された。
(7)医学雑誌編集者国際委員会(International Committee ofMedical Journal Editors:ICMJE)は2009年10月「ICMJE誌に利益相反を開示するための統一書式」を発表、その後寄せられた意見を反映して改訂版を2010年7月に発表した
(8)本学会における指針および細則はこれらの検討結果に沿うものであり、また今後の我が国における検討過程に沿いつつ、施行状況を勘案し、改訂してゆくべきものである。

Ⅰ.目的
本指針は、本学会の活動において、利益相反状態によって、活動の計画、実施、解析、報告等に不公正な偏りが生じること、臨床及び基礎研究の参加者の人権と安全の保護が損ねられることを防ぎ、公正な研究活動を促進するため、利益相反管理の方針と方法を定め、実施することを目的とする。

Ⅱ.対象者
本指針は、以下の者を対象とする。
(1)本学会会員
(2)本学会の年会等講演会や学会誌などで発表する者
(3)本学会の役員(理事長、理事、監事)、評議員、年会の大会長、常設および臨時で設ける委員会または作業部会等の委員
(4)学会を代表して外部で行う専門活動に携わる者
(5)本学会の事務職員(直接雇用の場合)

Ⅲ.対象となる活動
本指針は、本学会において行われる以下のような活動を対象とする。
(1)年会等講演会での発表
(2)学会機関誌、学術図書などでの論文発表およびこれらの発行
(3)役員・年会の大会長・委員会等の活動、学会を代表して行う外部専門活動
(4)研究および調査の実施
(5)研究の奨励および研究業績の表彰
(6)生涯教育研修会・指導医講習会等での発表
(7)その他本学会の目的を達成するために必要な事業特に、下記の活動を行う場合には、特段の指針遵守が求められる。

①本学会が主催する年会などでの発表
②学会機関誌などの刊行物での発表
③(薬物治療)ガイドライン、マニュアルなどの策定
④臨時に設置される調査委員会、諮問委員会などでの作業

Ⅳ.申告すべき事項
対象者は、企業・法人組織等から得られた経済的利益について、以下の(1)~(10)の事項につき、細則で定める基準および手順に従い、本学会理事長に申告する。理事長は、申告された内容を利益相反委員会に報告する。
年会・学会誌での発表の登録・投稿においては発表内容と関連する事項のみ申告対象とし、発表者本人の情報について、発表時に公表するものとする。
(1)企業・法人組織等の役員、顧問職、社員等への就任
(2)株式の保有
(3)特許権等実施料
(4)会議出席・講演など労力の提供に対する支払
(5)パンフレットなどの執筆・監修に対する原稿料・監修料
(6)研究費
(7)奨学寄付金
(8)寄付講座
(9)その他、上記以外の学会参加等のための旅費や贈答品などの受領
(10)対象者の配偶者、一親等の親族、収入・財産を共有する者に関する(1)~(9)の事項

Ⅴ.利益相反状態との関係で回避すべき事項
1.対象者の全てが回避すべきこと研究の結果の公表や診療(診断・治療)ガイドラインの策定などは、純粋に科学的な根拠と判断、あるいは公共の利益に基づいて行われるべきである。本学会の会員などは、研究の結果とその解釈といった公表内容や、研究での科学的な根拠に基づく薬物治療ガイドライン・マニュアルなどの作成について、その研究の資金提供者・企業の恣意的な意図に影響されてはならない。このため、以下の事項を回避すべきである。
(1)臨床試験参加者の仲介や紹介、特定期間の症例集積に対応した報賞金の取得
(2)特定の研究結果に対する成果報酬の取得
(3)研究結果の分析、公表に関して、資金提供者・企業が影響力の行使を可能とする契約の締結
2.研究の試験責任者が回避すべきこと
研究(臨床試験、治験を含む)の計画・実施に決定権を持つ責任者には、次の項目に関して重大な利益相反状態にない(依頼者との関係が少ない)と社会的に評価される研究者が選出されるべきであり、また選出後もその状態を維持すべきである。
(1)研究を依頼する企業の株の保有
(2)研究を依頼する企業や営利を目的とした団体の役員、理事、顧問など(無償の科学的な顧問は除く)
(3)当該研究に関係のない学会参加等に対する資金提供者・企業からの旅費・宿泊費の支払い
(4)当該研究に要する実費や正当な報酬以外の金銭や贈り物の取得
但し、上記に該当する研究者であっても、当該研究を計画・実行するうえで必要不可欠の人材であり、かつ当該研究が医学的に極めて重要な意義をもつような場合であって、当該利益が正当と認められる場合には、その判断と措置の公平性、公正性および透明性が明確に担保されるかぎり、当該研究の責任者に就任することができる場合がある。

Ⅵ.実施方法
1.利益相反委員会(当面、倫理委員会が兼務)は、理事長が設置し、利益相反に関する諸問題の管理、監視、相談、啓蒙活動を行う。本学会が行う活動において、重大な利益相反状態が会員に生じた場合、あるいは、利益相反の自己申告が不適切で疑義があると指摘された場合、理事長の求めに応じて、当該会員の利益相反状態につきヒアリングなどの調査を行い、その結果を理事長に答申する。

2.会員の責務会員はすべての医学研究の実施と発表を倫理的および科学的に正当かつ公正な方法・手順で行わなければならない。特に人間を対象とする臨床研究においては、参加者の保護と結果の公正さを確保するため、ヘルシンキ宣言、臨床研究に関する倫理指針などを遵守の上、本指針およびその細則の示す利益相反マネージメントのルールに従うこととする。
社会的な説明責任と透明性確保のため、研究の成果を年会等講演会や学会誌などで発表する場合、当該研究実施に関わる利益相反状態を、本指針の細則に従い、演題登録・論文投稿時に理事長に対し申告し、発表時に公表する。
理事長は申告内容を利益相反委員会に報告する。発表内容との関係で、本指針に反するとの指摘が会員・非会員からなされた場合には、理事長は利益相反委員会に審議を求め、その答申に基づき、妥当な措置を講ずる。

3.役員などの責務
本学会の役員(理事長、理事、監事)、評議員、年会の大会長、各種委員会および作業部会の委員は、本学会における活動に対し重要な責務と役割を担っている。このため、本学会の活動と関わる自らの利益相反状況については、就任した時点で本指針の細則に従い理事長に対し申告を行なう。
また、就任後、新たに利益相反状態が発生した場合には細則に従い、修正申告を行う。

4.理事長の役割理事長は、指針および本細則に従って、学会のあらゆる活動が公正かつ適切に行われるようにするため、以下の責務を担う。
(1)利益相反委員会を設置する。
(2)利益相反の申告を受けたときには、利益相反委員会にこれを報告する。
(3)利益相反に関する問題について、会員・非会員からの報告を受けたときには、利益相反委員会に諮問し、その答申に基づき対応・改善措置などを支持する。
(4)本指針に対する重大な違反について、VII-1。に示す不利益処分を行う場合には、利益相反委員会の答申について理事会で審議した上で措置を決定する。

5.年会の大会長の役割
年会の大会長は、研究の結果に関する発表において、明らかな本指針への違反を認めた場合には、理事長に報告を行った上で、利益相反委員会に諮問し、その答申に従い、発表の差し止め・取り消しなどの措置を講ずることができる。

6.編集委員会の役割
学会誌の編集委員会は、研究の結果に関する発表において、明らかな本指針への違反を認めた場合には、理事長に報告を行った上で、利益相反委員会に諮問し、その答申に従い、発表の差し止め・取り消しなどの措置を講ずることができる。

7.その他、本指針に反するような事項を認めた学会員は、理事長に報告し、理事長は必要に応じて利益相反委員会に諮問し、その答申に基づいて、改善措置を含む対応を講じることができる。

Ⅶ.指針違反者に対する措置と説明責任
1.指針違反者に対する措置
理事長は、本指針に対する重大な違反があると判断した場合、または重大な疑義もしくは社会的・道義的問題が発生した場合には、利益相反委員会に諮問し、その答申を踏まえ、理事会における審議を経て、その違反の程度に応じて一定期間、次の措置の全てまたは一部を講ずることができる。
(1)本学会が開催する年会での発表禁止
(2)本学会の刊行物への論文掲載禁止
(3)本学会の学術総会の大会長就任禁止
(4)本学会の役員会、委員会、作業部会への参加禁止
(5)本学会の役員の解任、または役員になることの禁止
(6)本学会会員の資格喪失、または入会の禁止指針違反者に対する措置が確定した場合、当該会員が所属する他の関連学会の長へ情報提供を行い、必要に応じて公表する。

2.不服申立被措置者またはその代理人は、本学会に対し不服申立をすることができる。本学会の理事長は、これを受理した場合、速やかに不服申立て審査委員会(暫定諮問委員会)を設置して、審査を委ね、その答申を理事会で協議したうえで、その結果を不服申立者に通知する。

3.説明責任本学会は、自らが関与する場所で発表された研究の成果について、本指針に対する重大な違反があると判断した場合は、社会に対する説明責任を果たさなければならない。

Ⅷ.他学会との連携
本学会は、本指針の見直し作業、細則に関する情報交換などを行うために、本学会関連学会、日本薬学会および同分科会としての他学会と連携し、情報交換、指針の共通化を図る。

Ⅸ.細則の制定
本学会は、本指針を運用するために必要な細則を制定することができる。

Ⅹ.指針の改正
本指針は、社会的要因や産学連携に関する法令の改正、整備ならびに医療および研究をめぐる諸条件に適合させるため、定期的に見直しを行い、改正することができる。

ⅩⅠ.施行日
本指針は平成28年7月1日より施行する。本指針の改訂は、細則に定める手続きによって行う。

付記
本指針は、日本内科学会他内科系団体による「臨床研究の利益相反(COI)に関する共通指針」をもとに社団法人日本精神神経学会の指針を参考にし、日本医学会「医学研究のCOIマネージメントに関するガイドライン」を参考にして、本学会の以下の委員会において検討・作成し、理事会および評議員会の承認を得て公表する

研究の利益相反(COI)に関する指針細則

(目的)
第1条 一般社団法人日本精神薬学会(以下、「本学会」という)における利益相反(Conflict of Interest:COI)管理の方針と方法を定めた「研究の利益相反(COI)に関する指針」(以下、「指針」という)の運用手順を示すため、本細則(以下、「細則」という)を以下のように定める。

(「研究」の定義)
第2条 本細則における「研究」には、すべての精神薬学の研究を対象とする。

(本学会講演会および論文発表におけるCOI 申告および公表)
第3条 本学会が主催する年会その他の講演会などで研究に関する発表・講演を行う者のうち筆頭発表者、および本学会の機関誌などで研究に関する発表を行う著者全員は、会員、非会員の別を問わず、自らの、および配偶者、一親等の親族、生計を共にする者に関する事項も含めて、発表内容と関連する企業・法人組織との経済的な関係について、演題登録時・論文投稿時から遡って過去一年間におけるCOI 状態を、本細則第5条の基準に従い、様式1 を用いて、理事長に対して自己申告しなければならない。
申告された内容は、理事長から利益相反委員会および、発表については年会や講演会等の運営委員会、論文については編集委員会に報告される。講演等における筆頭発表者は申告した発表者本人のCOI 状態につき、発表スライドの最初(または演題・発表者などを紹介するスライドの次)に様式2により、あるいはポスターの最後にスライド発表と同様の情報を適切な形式で開示する。
論文においては、申告した著者全員のCOI 状態につき、論文末尾に掲載される。申告対象となるCOI 状態がない場合は、「No potential conflicts ofinterest were
disclosed.」「開示すべき利益相反は存在しない。」などの文言を記載する。

(役員、評議員、委員会委員、年会大会長などのCOI 申告)
第4条 本学会の役員(理事長、理事、監事)、評議員、年会等・講演会担当責任者(大会長など)、各種委員会および作業部会の委員、学会を代表して外部で専門活動に携わる者、学会の事務職員(直接雇用者)は、自らの、および配偶者、一親等の親族、生計を共にする者に関する事項も含めて、学会活動と関連する企業・法人組織との経済的関係について、就任時の前年一年間におけるCOI 状態を、本細則第5条の基準に従い、様式3 を用いて、新就任時と、就任後は毎年三月一日から三十一日の間に、理事長に対して自己申告しなければならない。在任中に新たなCOI 状態が発生した場合には、8 週以内に様式3 を以て報告する。申告された内容は、理事長から利益相反委員会に報告されるが、原則として非公開とし、個人情報として厳格に管理される。ただし、委員会等の活動が講演会、年会等講演会・学会誌等で研究成果として発表される場合には、第3条の発表者・著者における方法と同様に開示される。また、指針・細則に対する違反が疑われた場合には、理事長の指示による利益相反委員会での審議・答申に基づき、理事長の決定として開示される場合がある。

(COI 自己申告の基準)
第5条 企業・法人組織等から得られた経済的利益について、COI 自己申告が必要な金額は、以下のように定める。
① 企業・法人組織等の役員、顧問職、社員等については、一団体からの報酬額が年間100 万円以上。
② 株式の保有については、一企業についての一年間の株式による利益(配当、売却益の総和)が100 万円以上、または当該全株式の5%以上を所有する場合。
③ 特許権等実施料については、一団体からの一つの実施料が年間100 万円以上。
④ 会議出席・講演など労力の提供に対する支払については、一団体からの年間合計が50 万円以上。
⑤ パンフレットなどの執筆・監修に対する原稿料・監修料については、一団体からの年間合計が50 万円以上。
⑥ 研究費については、一団体から支払われた総額が年間200 万円以上。
⑦ 奨学(奨励)寄付金については、一団体から、申告者個人または申告者が所属する部局(講座・分野)あるいは研究室の代表者に支払われた総額が年間200 万円以上。
⑧ 寄付講座に所属している場合には、金額の定めなく所属の有無を申告する。
⑨ その他、研究とは直接無関係な旅行、贈答品などの提供については、一つの企業・法人等から受けた総額が年間5 万円以上。

(COI 状態との関係で回避すべき事項)
第6条 本学会会員は、研究の結果とその解釈といった公表内容や、研究での科学的な根拠に基づく薬物治療ガイドライン・マニュアルなどの作成について、その研究の資金提供者・企業の恣意的な意図に影響されてはならないため、以下の事項を回避する。
(1)臨床試験被験者の仲介や紹介、特定期間の症例集積に対応した報賞金の取得
(2)特定の研究結果に対する成果報酬の取得
(3)研究結果の分析、公表に関して、資金提供者・企業が影響力の行使を可能とする契約の締結研究(臨床試験、治験を含む)の計画・実施に決定権を持つ責任者には、次の項目に関して重大な利益相反状態にない(依頼者との関係が少ない)と社会的に評価される研究者が選出されるべきであり、また選出後もその状態を維持すべきである。
(1)研究を依頼する企業の株の保有
(2)研究を依頼する企業や営利を目的とした団体の役員、理事、顧問など(無償の科学的な顧問は除く)
(3)当該研究に関係のない学会参加等に対する資金提供者・企業からの旅費・宿泊費の支払い
(4)当該研究に要する実費や正当な報酬以外の金銭や贈り物の取得
但し、上記に該当する研究者であっても、当該研究を計画・実行するうえで必要不可欠の人材であり、かつ当該研究が医学的に極めて重要な意義をもつような場合であって、当該利益が正当と認められる場合には、その判断と措置の公平性、公正性および透明性が明確に担保されるかぎり、当該研究の責任者に就任することができる場合がある。

(利益相反委員会)
第7条 理事長は、指針および本細則に従って本学会の活動におけるCOI の管理を適切に行うため、利益相反委員会を設置する。利益相反委員会は以下を任務とする。
(1)理事長から報告された申告書について、特に重大な問題があると判断した場合には、理事長に対して意見を述べる。
(2)指針および本細則に対する重大な違反について、会員・非会員からの指摘があった場合には、理事長の諮問に応じて、ヒアリングを含む調査を行い、意見を述べる。
(3)その他、指針および本細則の遵守のために必要であると理事会が認めた、利益相反に関する諸問題の管理、監視、相談、啓発などの活動利益相反委員会は、理事長が指名する本学会会員若干名および外部委員1 名以上により構成し、委員長は委員の互選により選出する。利益相反委員会委員は委員会活動を通して知り得た申告者のCOI 情報について守秘義務を負う。利益相反委員会の任期は4 年とし、再任を妨げない。

(理事長の役割)
第8条 理事長は、以下の責務を担う。
(1)利益相反委員会を設置する。
(2)利益相反の申告を受けたときには、利益相反委員会にこれを報告する。
(3)利益相反に関する疑義・問題等について、会員・非会員からの報告を受けたときには、利益相反委員会に諮問し、その答申に基づき対応・改善措置などを指示する。
(4)本指針に対する重大な違反について、指針VII-1および本細則第8条に示す不利益処分を行う場合には、利益相反委員会の答申について理事会で審議した上で措置を決定する。

(年会大会長の役割)
第9条 年会の大会長は、学会で研究の成果が発表される場合には、本指針に明らかに反する演題については、理事長に報告を行った上で、利益相反委員会に諮問し、その答申に従い、発表の差し止め・取り消しなどの措置を講ずることができる。この場合には、速やかに発表予定者・発表者に理由を付してその旨を通知する。これらの措置については理事長に報告する。

(編集委員会の役割)
第10 条 学会誌編集委員会は、学会機関誌などの刊行物で研究成果の原著論文、総説、薬物治療ガイドライン、編集記事、意見などが発表される場合、本指針に明らかに反する場合には、理事長に報告を行った上で、利益相反委員会に諮問しその答申に従い、掲載の差し止め・取り消しなどの措置を講ずることができる。この場合、速やかに当該論文投稿者に理由を付してその旨を通知する。掲載後の措置については、当該刊行物などに編集委員長名でその旨を公知することができる。これらの措置については理事長に報告する。

(COI自己申告書の管理)
第11 条 申告されたCOI 情報は、講演者・論文著者が自ら公表する場合を除き、原則として非公開とする。学会発表のための抄録登録時・学会誌への論文投稿時に提出されるCOI 自己申告書は提出の日から2 年間、理事長の監督下に法人の事務所で厳重に保管されなければならない。役員・委員・講演会責任者等の申告書については、その任期終了または任務の撤回の日から2 年間、理事長の監督下に法人の事務所で厳重に保管されなければならない。これら保管期間を経過した後には、理事長の監督下において速やかに削除・廃棄される。但し、削除・廃棄することが適当でないと理事会が認めた場合には、必要な期間を定めて削除・廃棄を保留できるものとする。

(問題に対する対応および説明責任)
第12 条 非公開情報として管理されるCOI 情報は、学会の活動に関連して、学会員・非学会員から本指針違反の疑いを理事長に対する報告として指摘された場合には、理事長は、当該指摘を受けた当事者および利益相反委員会に諮問し、利益相反委員会の答申を受けて、対応を決定する。この場合に、本学会として社会的・道義的な説明責任を果たすために必要があると判断した場合に限って、必要な範囲で本学会の内外に開示または公表することができる。指摘を受けたCOI 情報の当事者は、理事長に対して意見を述べることができる。理事長はその意見を勘案して開示または公表の判断をすることを原則とするが、開示または公表について緊急性があって意見を聞く余裕がないときは、その限りではない。

(違反者に対する措置)
第13 条 理事長は、本指針に対する重大な違反があると判断した場合、または疑義もしくは社会的・道義的問題が発生した場合には、利益相反委員会に諮問し、利益相反委員会が十分な調査を行った上での答申を踏まえ、適切な措置を講ずる。
問題が著しく重大である場合には、理事会における審議を経て、その違反の程度に応じて一定期間、次の措置の全てまたは一部を講ずることができる。この場合に、措置についての理由を文書で被措置者に通知しなければならない。
(1)本学会が開催する年会での発表禁止
(2)本学会の刊行物への論文掲載禁止
(3)本学会の年会の大会長就任禁止
(4)本学会の理事役員会、委員会、作業部会への参加禁止
(5)本学会の役員の解任、または役員になることの禁止
(6)本学会会員の資格喪失、または入会の禁止指針違反者に対する措置が確定した場合、当該会員が所属する他の関連学会の長へ情報提供を行い、必要に応じて公表する。

(不服申し立て)
第14 条 被措置者またはその代理人は、受けた措置に対して不服があるときは、措置についての通知を受けた日から7 日以内に、理事長宛ての不服申し立て審査請求書を提出することにより、不服審査請求をすることができる。審査請求書には、措置の理由に対する意見を明記する。

(不服申し立て審査手続)
第15 条 不服申し立ての審査請求を受けた場合、理事長は速やかに不服申し立て審査委員会(以下、「不服審査委員会」という)を設置しなければならない。審査委員会は理事長が指名する本学会会員若干名および外部委員1 名以上により構成され、委員長は委員の互選により選出する。利益相反委員会委員は審査委員会委員を兼ねることはできない。審査委員会は審査請求書を受領してから30 日以内に委員会を開催してその審査を行う。不服審査委員会は、特別の事情がない限り、審査に関する第1 回の委員会開催日から1 ヶ月以内に理事長に対して答申する。理事長は、この答申に基づいて措置を決定する。

附則
(施行期日)
第1条 本細則は、平成24年10月19日から一年間を試行期間として施行し、その間は第8、9、10、13 条に示す不利益処分は行わない。その後に完全実施とする。

(本細則の改正)
第2条 本細則は、社会的要因や産学連携に関する法令の改正、整備ならびに医療および研究をめぐる諸条件の変化に適合させるために、原則として、一年ごとに見直しを行う。改正においては、理事会及び評議員会の承認を得るものとする。

(役員などへの適用に関する特則)
第3条 本細則施行のときに既に本学会役員などに就任している者については、本細則を準用して速やかに所要の報告などを行わせるものとする。

付記
本指針は、日本内科学会他内科系団体による「臨床研究の利益相反(COI)に関する共通指針」をもとに社団法人日本精神神経学会の指針を参考にし、日本医学会「医学研究のCOIマネージメントに関するガイドライン」を参考にして、本学会の以下の委員会において検討・作成し、理事会および評議員会の承認を得て公表する。

・ 倫理委員会
・ 編集委員会

参考文献

参考文献:
1)The World Medical Aoosication. The DeclarationfHelsinki :Ethical Principles for Medical Research Involving Human Subjects.
(日本医師会、訳。ヘルシンキ宣 言人間を対象とする医学研究の倫理原則)

2)厚生労働省。臨床研究に関する倫理指針。平成15年7月30日、平成20年7月31日最新改正。

3)文部科学省科学技術・学術審議会・技術・研究基盤部会・産学官連携推進委員会・利益相反ワーキング・グループ。利益相反ワーキング・グループ報告書。平成14(2002)年11月1日。

4)臨床研究の倫理と利益相反に関する検討班。臨床研究の利益相反ポリシー策定に関するガイドライン。平成18(2006)年3月。

5)厚生労働省大臣官房厚生科学課長。厚生労働科学研究における利益相反(Conflictof Interest :COI)の管理に関する指針について。平成20(2008)年3月31日科発第0331003号。

6)日本内科学会、日本肝臓学会、日本循環器学会、日本内分泌学会、日本糖尿病学会、日本呼吸器学会、日本血液学会、日本アレルギー学会、日本感染症学会、日本老年医学会。臨床研究の利益相反(COI)に関する共通指針(Policy of Conflict of Interest inClinical
Research)2010年

7)日本医学会。医学研究のCOI マネージメントに関するガイドライン。2011 年。

8)International Committee of Medical JournalEditors. ICMJE form for disclosure of potential conflicts of interest. 2010